中間成果報告書(2025年度)

受託:
東京大学大学院教育学研究科附属
発達保育実践政策センター
委託:
公益財団法人前川財団

研究成果報告書(2025年度)

研究課題名:
幼児教育と小学校教育の接続に関する研究
~言葉と表現を媒介とした探究的活動に着目して~
研究代表者:
野澤祥子
研究協力者:
遠藤利彦、浅井幸子、石井悠
研究期間:
2025年4月〜2026年3月(全期間:2025年4月〜2028年3月)
キーワード:
接続、架け橋期、言葉、表現、探究的活動
【研究実績の概要】
幼児教育から小学校への移行は大きな文化的変化である。近年は「架け橋期」や遊びを通した資質・能力の育成が強調される一方、言葉や表現を媒介に気づきや思考を深める探究的経験の意義も再確認し、接続における学びの質を問い直す必要がある。しかし、これまでは、思考を深める探究的活動に十分な焦点が当てられていない。そこで本研究では、接続期教育における言葉や表現を媒介とした探究的活動の可能性を示すことを目的として、接続期教育の議論を整理し、園における「言葉」「表現」「探究活動」に関する保育者調査を実施する。さらに5歳児と小学校1年生で探究的活動を実践する。これらを検討する中で、日本語を母語としない子どもにも着目し、探究的活動を軸にした接続期教育の可能性を示すことを目指した。
今年度はまず、国内外研究を整理し、ブロンフェンブレナーが提唱した生態学的システム論に基づき、各レベルの課題と対応、特別な支援を要する子どもの移行研究を概観し、今後の課題と展望についてレビュー論文にまとめた。次に、2025年7月に日本全国の未就学の子どもをもつ保護者を対象に、接続(小学校入学)に対して抱いている思いを調査した上で、2026年2月には、園に勤務する保育者を対象に、言葉や表現、探究活動についてどのような実践を行なっているのか探索的な実態調査を行なった。最後に探究活動の実践については、調査期間を踏まえ(本来であればより幼少期からの検討が望ましいが、難しいため)、子どもたちが4歳児から5歳児までの間に探究活動の経験を積み重ね、学びを深めていく様相を検討し、その経験がその後の学びにとってどのような意味を持ちうるかを考察することを目的に4歳児クラスで「タネの探究」を行なった。
今後は、今年度得られた成果をまとめ、発表しながら、さらにアクションリサーチなどを継続し、接続期における探究活動の可能性について検討したい。
【今後の研究の推進方策】
今後も、当初の計画通り、接続機教育における言葉や表現を媒介した探究的活動の可能性について検討を行う。とくに次年度は、今年度行った調査等の成果発表・報告をまとめていく。具体的には、調査結果の学会発表や論文化を進め、保育者向けの日本語を母語としない子どもへの言語支援に関するリーフレットも作成する。また、探究の実践活動についても、継続して行う。
今年度実施した調査により、保護者は子どもが年長クラスに進級する以前から、就学に対する不安を抱いていることが明らかとなった。また、保育者は絵本や歌など、子どもの言語発達につながる活動を日常的に提供しているものの、特に絵本の活用は情緒的な目的に偏る傾向がみられ、「子どもの言葉は子どもの中で育つ」という認識が依然として根強いことが示唆された。さらに、子どもの言葉の発達において「対話」の重要性は認識されている一方で、絵本の読み聞かせ場面や制作活動、探究の時間における対話は限定的であり、これらの活動が保育者主導の一方向的な指示や教授のもとで行われることが多いことが示唆される。これらの調査結果を踏まえ、今後成果発表準備を行いながら、接続期の子どもの言葉や表現、探究活動について、さらに検討を行いたい。
【研究発表】
《雑誌論文》
幼保小接続(保幼小接続)に関する研究の概観と展望:
生態学的アプローチからの整理
西田季里・野澤祥子・廣戸健悟・石井悠. (2026).
東京大学大学院教育学研究科紀要, 65, 47-67.
(東京大学学術機関リポジトリ・データベースに格納予定)

以上