理事長挨拶

 私たち前川財団は、将来の日本の発展を牽引し、国際社会の中で、尊敬され、信頼されながら活躍する優秀な人財が輩出することを切に願っています。その21世紀の日本の発展に不可欠な若者には、特に幼少年期における教育、いわゆる「子育て」が重要であると思いを込め、これからの「子育て=幼少年期の家庭教育・地域教育」を、原点に立ち返り、日本の歴史と文化を振り返りながら、その将来的なありかたの研究と実践について、できる限りの支援を行って参ります。
 元来、日本における「子育て」の伝統的な教育は、人にもともと備わっている、人や自然に対するやさしさと、人と人との結びつき(「場所と共同体」)を育むための基礎教育となっていたもので、世界で高く評価されている「もったいない」「もてなし」や「思いやり」「礼儀正しさ」「清潔さ」「協調性」をはじめとする「日本人らしさ、日本人としての資質」と通底しています。
 このような教育は、室町時代頃から始まり江戸時代には完成されていたと言われています。日本人は、伝統的・文化的に、その時代に合った地域共同体を各地に形成し、共同体の中の人間に対する信頼と思いやりを通じた「個から共同体の意思」を重んじる教育として、自律的になされてきたからではないでしょうか。
 近年、核家族が進む時代の風潮の中で、「子育て」を、家族、地域が共同体として皆で担うという文化が失われつつあります。これからの「子育て」に求められるものは何か、今に忘れられているものは何かから始まり、日本の持つ「子育て」の良き伝統を生かして、21世紀型の理想的な家庭・学校・地域連携の教育システム創生の手助けを行いたいと考えております。

公益財団法人 前川財団
理事長 前川 真